バミューダの保険会社 Custodian Life Limited(清算中)の共同清算人(PwC)は、2026年10月9日(金)に、契約者・債権者・IFA向けの第1回の電話会議を開きました。
前回までの記事は、Custodian Life 清算の現在地(2026年9月版)と、9月29日の書簡の記事です。今回の話で前回記事の一部が変わったため、末尾に変更点をまとめました。
1. 最初の分配は、照合できた分から。時期は2026年内の見込み
清算人の説明の中心は、契約者の保有資産とカストディアンの保有記録が完全に一致した分は、2026年中に分配できる見込みだということです。今四半期のうちに資産の返還を始めることを目標にしています。ただ、最初の分配にはカストディアン側の協力が要り、込み入った問題もあるため、進め方の詳細は11月の次回会議で改めて説明するとしています。
分配率や個別の金額、具体的な月は、今回は示されていません。
2. 照合できない分は、債権届出の期限を決めてから
記録が一致しない資産を分配するには、債権届出の期限(バー・デート)を先に設ける必要があります。清算人は、その期限を2027年2月末より前に宣言する見込みだと述べました。5月の債権者集会のあと、清算人の就任が2か月遅れたことが背景です。期限の設定には裁判所への申立てが必要で、日付そのものはまだ決まっていません。参考までに、前任のDeloitteは2026年12月31日を提案していました。
清算人は、裁判所に申し立てる際に、集めたデータが多いほど説明しやすくなるとしています。そのため、評価明細をまだ送っていない方は、日付の新しいものを早めに清算人のメールアドレス(bm_custodianlife@pwc.com、@は半角に置き換えてください)へ送るよう呼びかけています。
3. スウェーデンの仲裁は、Custodian側が概ね敗訴
この仲裁は、契約者データを渡さないスウェーデンのサービス会社 JP Consulting を相手に、Deloitteが1年以上前に始めたものです。判断は9月10日に清算人へ届き、仲裁人は全体としてCustodian側に不利、JP Consulting側に有利と判断しました。要点は三つです。
- 契約者データを受け取る権利自体はCustodianにありましたが、GDPR(EUの個人データ保護法)の制約で、JP Consultingは実際には渡せないとされました。
- 2024年・2025年のサービス料は、データを渡せなくても支払う必要があります。JP Consulting側の軽い契約違反は、金額に反映されています。
- 認容額は14,062,367スウェーデンクローナ(約140万ドル)で、JP Consultingの弁護士費用と仲裁人の費用を含みます。判断は最終的で拘束力があり、取り消しを求めても通る見込みは非常に薄く、審査だけで6〜18か月かかると助言されているとのことです。清算人は対応を検討中です。
契約者にとって実際に役立つのは、データ開示請求(DSAR)です。判断でJP Consultingが契約者データの「管理者」とされたため、契約者本人が、自分のデータ(評価明細を含みうる)の開示をJP Consultingに請求できます。評価明細が手元になく請求を考えている方は、できるだけ早く請求するよう勧められています。結果の見通しは分からないとしつつ、債権届出の期限を待つ必要はない、という説明です。請求書式のひな形は、まもなく公式サイトに載る予定とされていますが、筆者が確認した10月14日時点では見つかっていません。なお清算人は、仲裁の結果をめぐって誤った情報が出回っていると注意しています。
4. 資産とカストディアンの現状
現金。Butterfield銀行にあった資金は、9月10日と17日に計約3,630万ドルがLloydsへ移りました。このうち約2,600万ドルは、Lloyds・ANZ・OCBCのマネー・マーケット預金(年3.87〜4.25%)で運用中です。残る約1,000万ドルはLloydsの口座(年3.5%)にあります。
カストディアン。XNT(マルタ)は、Deloitteの時代から協力に消極的でした。清算人の就任通知への返信が届いたのは10月6日で、就任の確認を求めてきています。担当者は、全面的な協力が得られるまでは慎重にみるとしています。マルタの裁判所での承認申立ては、9月23日の審理が担当裁判官の退官で開かれず、次の日程は未定です。Logic(英国)は2026年初めに特別管理に入りましたが、資産と現金は守られているとの説明です。Linear Investmentsへの移管案があり、年内の実現を期待しています(費用の負担は未解決)。Julius Baerは、スイスの裁判所の承認がなければ清算を認めない姿勢で、清算人は価値が小さいとみて対応を検討中です。
直接投資。Custodian Lifeの帳簿上の直接投資は56件で、管理会計上の価値は約7,600万ドルです。このうち約2,520万ドル(約3分の1)は、すでに破産手続き中か解散した投資先でした(会議の音声では「約2,600万ドル」)。清算人は、価値がない可能性があるとみていますが、自身では評価していません。
5. 照合の進み具合とデータ集め
清算人は、契約者の資産を会社の資産と分けて管理する「分離管理」を、できる限り守ると繰り返しました。そのために、契約者から集めた評価明細(約1,650通。約85%が2023年11月以降のもの)と、カストディアンの保有記録を突き合わせています。Deloitteから引き継いだ8,000件超の文書に加え、独自の調査で約650件の関連文書を追加で入手したそうです。
会議では、そのための照合システムが画面で紹介されました(個人データは映していません)。銘柄ごとに契約者の申告数量とカストディアンの保有数量を並べる仕組みで、ぴったり一致する銘柄がある一方、カストディアン側が申告より多い銘柄(例:契約者の申告1,300口に対して、カストディアン側は合計2,601口)や、申告はあるのにカストディアン側に記録がない銘柄(例:英国株)も見られた、という説明でした。清算人は、一致した分から返す方針で、このシステムは13週間前には存在しなかったと述べています。
元の契約者管理システム(Policy Manager)のデータは、IT業者4社を調べましたが、まだ入手できていません。一方、バミューダ当局の納税ポータルとKPMGからは有用な情報が得られたとのことです。契約者のメールアドレスを887件追加し、Deloitteの一覧になかった契約を790件見つけたそうです。
6. これから起きること
- 次回の会議は11月で、日時は未定です。質問はメールで受け付け、テーマごとにまとめて公式サイトで回答する方式で、今回の会議ではQ&Aの時間はありませんでした。
- 検査委員会(COI)は、元の債権者特別委員会のメンバーで構成する申立てを、裁判所に行う予定です。これとは別に、希望者を募る非公式の債権者委員会(Informal Creditors’ Committee)もつくります。参加を希望する場合は、清算人へメールで連絡します。
- 清算人の報酬は、契約者が分配を受け取ったときにだけ受け取る、と説明されました。
7. 前回記事からの変更点
| 項目 | 前回記事 | 今回の説明 |
|---|---|---|
| 債権届出の期限 | 2026年12月31日(Deloitteが提案していた期限) | 期限を宣言する時期は2027年2月末より前。日付は未定で、裁判所への申立てが必要 |
| 最初の分配 | 12月の中間分配 | カストディアンの記録と照合できた分を2026年中。月の明示はなく、詳細は11月。対象(上場証券・現金)との関係は説明されていない |
| スウェーデンの仲裁 | 結果待ち(2026年8月31日までに判断の見込み) | 9月10日に清算人へ届き、Custodian側が概ね敗訴 |
今回の説明で触れられていないのは、分配率と個別の金額、そして3月の申立て(分配の設計・評価基準日)に対する裁判所の判断です。11月の会議で説明があるかどうかが、次の焦点です。

