Custodian Life経由の投資先ファンド 概要と最新状況
Custodian LifeのEIB(Exclusive Investment Bond)を通じて投資していたファンドは以下の3本です。清算における回収率は、各ファンドの状態に依存する「個別計算方式」が検討されています。3ファンドとも清算前から深刻な問題を抱えており、特にMontreuxHCは投資先が事実上破綻しています。
❶ HorizonPlus
| ステータス | 配当停止・流動性危機・解約不能 |
| ISIN | MT7000029807(Class E USD Shares)— マルタ籍 |
| 投資対象 | 英国の55歳以上の高齢者向け住宅ローン(RIO: Retirement Interest Only Mortgages)。RIOの金利収入を原資とするファンド |
| 目標リターン | 年平均12〜14%(うち固定金利6%の半期配当を含む) |
| ロックイン期間 | 当初3年間。経過後は自動的に2年間延長される仕組み |
| IFA | XXX(2023年9月時点で利益確定のための解約請求を推奨) |
🔴 経緯と最新状況:
2023年9月(IFAからの通知):
・分配金が年6%→0%(無配当)に低下。年12%目標に対し実績が10%止まりで分配余力を喪失
・ロックイン期間の自動延長(3年→+2年)の仕組みが判明
・IFAから解約申請を推奨される
2024年2月(解約申請の試み):
・解約請求を試みるも、EIB口座がCustodian Life社の監査中で操作不能
・IFAから「直接ファンドへ解約申請してもCustodian Lifeからの指示しか受け付けられない」と回答。監査終了を待つしかない状態に
2024年10月時点(ファンドからのレター):
・年初来リターンは9.64%〜11.73%と運用自体は堅調
・しかし中東情勢等の影響で想定以上の解約要求が殺到、流動性が逼迫
・為替変動リスクも重なる — ファンドの運営元または大口出資者にイスラエル関連の資金フローがあり、2023年10月のイスラエル・ハマス衝突後にイスラエル通貨(シェケル)が急落。投資対象の英国RIOモーゲージ自体はポンド建てだが、ファンド構造上のシェケル・エクスポージャーにより為替差損リスクが拡大
2025年1月(配当停止の正式通知):
・2025年1月に予定されていた半期配当の支払いが正式に停止
・解約要求への対応のため一部資産の早期売却を実施中
投資家への影響:
・ファンド自体の運用は継続しているが、流動性危機により配当停止・解約対応困難な状態
・EIBの凍結とファンド側の流動性問題が二重に重なり、投資家は事実上アクセス不能
・RIO(英国高齢者住宅ローン)は不動産担保のため一定の資産裏付けはあるが、早期売却による毀損リスクあり
・公開情報はほぼ存在しない(EIB経由のプライベート・ファンドのため、Bloomberg等への登録なし)
❷ MontreuxHC(Montreux Healthcare Fund)
| ステータス | 投資先ACG破綻+ファンド自体も清算手続中 |
| ISIN | IM00BL68GK60(Class A2 USD)/ IM00BD6L2L28(Class A USD)— マン島籍 |
| 投資先 | Active Care Group(ACG)— 英国の病院・ヘルスケア事業(精神科・神経リハビリ) |
| サスペンド | 2022年10月3日からファンド閉鎖(ACG売却完了まで取引停止) |
🔴 重大な最新状況(2024年5月〜2025年2月):
ACGが2024年5月に経営破綻し、プリパック売却されました。さらにファンド自体も2024年10月に自主清算を開始しています。
破綻までの経緯:
・2022年末から財務悪化が始まる。高インフレ(ピーク時11.1%)、光熱費年間200万ポンド増、食品インフレ19.1%、人材不足によるコスト増が重なる
・負債総額は2018年の3,600万ポンドから2024年4月には1億7,500万ポンドまで膨張(買収を借入で賄った結果)
・2023年11月のファンド報告書ではNAV算定不能とされ、BDO LLPに独立調査を委託
・株主・債権者間の再建交渉が数ヶ月にわたり難航
2024年5月 — ACGの破綻:
・2024年5月29日、管理者(administrator)が任命される
・即日、プリパック売却(pre-packaged sale)が実行。ACGの資産はGadwall Holdings Ltd(Sequoia Economic Infrastructure Income Fund=SEIIFが設立した新会社)に6,200万ポンド超で売却
・NHS Englandは5月に初めて財務悪化を把握し、新規患者の受入れを即時停止
・ACGのCEOキース・ブラウナーは社内メールで「食料、薬品、派遣スタッフへの支払いを停止せざるを得ない段階に近い」と警告していた
2024年8月— 推定NAV:
・2024年8月31日時点の推定NAVが約421万8,115ポンドと、2022年9月時点(4億2,606万9,295ポンド)の約1%( 2024年8月31日時点の推定NAV:約421万8,115ポンド)まで激減していることが清算人報告で明らかに。
・清算委員会の設立も14名の候補者から5名への絞り込みで合意が得られず、未設立のまま。
2024年10月〜2025年2月 — ファンド自体の清算:
・2024年10月3日、Montreux Healthcare Fund PLCがメンバー決議により自主清算(voluntary winding up)を開始
・清算人としてFRP Advisory(マン島)のGordon Wilson氏とPaul Allen氏が任命
・2025年2月13日、マン島高等裁判所が裁判所監督下での清算継続を命令(Companies Act 1931 第243条に基づく)
・債権者の請求期限は2025年3月21日と設定(マン島官報に公告済み)
投資家への影響:
・Montreux Healthcare Fundが保有していたACG持分は、プリパック売却によりSequoiaに移転
・売却価格6,200万ポンドは負債1億7,500万ポンドを大幅に下回っており、エクイティ(株式)投資家への回収はほぼゼロと推定される
・ファンド自体も清算手続中であり、EIBを通じてMontreuxHCに投資していた場合、Custodian Lifeの清算とファンドの清算が二重に進行する状態
・連絡先:MontreuxHealthcareFund@frpadvisory.com(FRP Advisory, 6th Floor, Victory House, Prospect Hill, Douglas, Isle of Man)
❸ Vallea Fund → Pecora QMS Fund Class 2X USD
| ステータス | マネージャー交代後も運用不振 — 通算-42.75% |
| ISIN | KYG9315A2672(ケイマン諸島籍) |
| 名称変遷 | Vallea Fund → Vallea Fund – Quant Multi Strategy (2X)(2023年2月)→ Pecora QMS Fund Class 2X USD(現在) |
| 交代時期・理由 | 2023年2月頃。旧マネージャーの運用成績不振により、Pecora Capitalに交代。投資家側の手続き不要で自動移行 |
| 運用会社 | Pecora Capital LLC(米国、2012年設立。創業者はモルガン・スタンレー出身のアーロン・スミス氏) |
| 新戦略 | 「利食い&ロスカットシステム(日次)」+「マネージド・フューチャーズ戦略」の組み合わせ。35のグローバル市場で株価指数・金利・通貨・エネルギー・金属・コモディティのロング/ショートを行うクオンツ・マルチ戦略 |
⚠ 最新状況(2025年3月31日時点の評価):
実際の運用実績:通算 -42.75%
・ISIN: KYG9315A2672(ケイマン諸島籍)
・基準価格(NAV): 89.69(2025年3月31日時点)
・取得コスト: USD 10,000 → 現在の評価額: USD 5,725(通算 -42.75%)
ファンドの設立来の公称平均年利は約26〜28%とされていましたが、実際のポートフォリオ上では大幅なマイナスとなっています。「設立来の平均年利」は過去のピーク時の数値であり、マネージャー交代前後のパフォーマンス悪化やEIB凍結期間中の影響を反映していません。
Pecora Capital自体は運用を継続しており、Bloombergにもティッカー「VALLEAN:KY」として登録されています。ただし、Custodian Life清算下でEIB経由のポジションがどのように扱われるかは不透明です。デロイトの清算プロセスでは、直近の評価額(約$5,725)が基準になる可能性があり、取得時の$10,000から半減近い損失が確定するリスクがあります。
ISINコードがあるのに、外からは何もわからない
3ファンドにはそれぞれ正式なISIN(国際証券識別番号)が付与されています。ISINは本来、証券を一意に識別し、NAV(基準価格)や取引履歴を追跡するための国際標準コードです。
| ファンド | ISIN | 籍地 | 外部からのNAV確認 |
|---|---|---|---|
| HorizonPlus | MT7000029807 | マルタ | 不可(PIF、公開NAVデータなし) |
| MontreuxHC | IM00BL68GK60 | マン島 | 不可(清算手続中、NAV算定自体が停止の可能性) |
| Pecora QMS | KYG9315A2672 | ケイマン諸島 | 限定的(Bloombergティッカーあり、ただしTerminal契約が必要) |
通常の投資信託やETFであれば、ISINを使ってMorningstar・Bloomberg・Yahoo Finance等で最新NAVを即座に確認できます。しかし、EIB経由で投資していたこれらのファンドはすべてオフショア籍のプライベート・ファンドであり、NAVが公開データベースに流れていません。投資家がファンドの現在価値を知る手段は、ファンド運用会社からの直接レポートか、EIBのValuation Statementのみ — そしてそのEIBがCustodian Lifeの清算により凍結されています。
つまり、「自分の資産が今いくらなのか、外部から確認する方法がない」という状態です。これはオフショア投資における情報の非対称性の典型的な問題であり、同様のEIB投資家が共通して直面している状況と考えられます。
3ファンドの回収見通しまとめ
| ファンド | 深刻度 | 回収見通し |
|---|---|---|
| HorizonPlus | 中〜高 | 運用は継続しているが流動性危機で配当停止・解約不能。RIO(不動産担保ローン)のため一定の資産裏付けはあるが、早期売却による毀損リスクあり |
| MontreuxHC | 極めて高 | 投資先ACGが破綻・プリパック売却済み。エクイティ投資家への回収はほぼ絶望的 |
| Pecora QMS Fund | 高 | 運用会社は存続しているが、評価額は取得時から-42.75%。清算時にこの評価額が基準となれば、投資額の半分近くが毀損 |
※ 上記は筆者の個人的な推定であり、実際の回収率はデロイトによる個別計算の結果に依存します。投資判断や法的助言を構成するものではありません。
【参考】回収額の推察シミュレーション
仮に各ファンドに$10,000ずつ、合計$30,000を投資していた場合、公開情報から推察される回収レンジは以下の通りです。
| ファンド | 投資額 | 推察回収額 | 回収率 | 根拠 |
|---|---|---|---|---|
| HorizonPlus | $10,000 | $3,000〜$6,000 | 30〜60% | 英国RIO(不動産担保ローン)のため実物担保あり。ただし解約殺到による早期売却(ファイアーセール)で担保価値が毀損するリスク。ファンド自体は清算手続には入っていない |
| MontreuxHC | $10,000 | $0〜$500 | 0〜5% | ACGの負債1.75億ポンドに対し売却価格は6,200万ポンド。エクイティは完全に吹き飛んでおり、清算配当があっても債権者(銀行等)が優先。エクイティ投資家は最後列 |
| Pecora QMS | $10,000 | $5,000〜$7,000 | 50〜70% | Valuation Statement上でNAV 89.69、評価額$5,725。運用会社は存続し流動資産で運用中。デロイトが直近NAVで評価すれば$5,000〜$5,700が基準。ただしEIB清算コスト控除あり |
| 合計 | $30,000 | $8,000〜$13,500 | 27〜45% |
上記に加え、EIB清算プロセス自体のコスト(デロイトの清算人報酬、法務費用、管理費用等)が差し引かれる可能性があります。オフショアの清算は長期化しやすく、数年単位の時間がかかることも珍しくありません。最終的な回収額はさらに目減りするリスクがあります。
⚠ 重要な免責事項
上記の推察は、2026年4月時点の公開情報・報道・ファンドレターに基づく筆者個人の見解であり、投資助言、法的助言、税務助言のいずれにも該当しません。実際の回収率はデロイトによる個別計算・裁判所の判断・各ファンドの清算進行状況によって大きく変動します。具体的な対応については、オフショア投資に詳しい弁護士または専門のIFAにご相談ください。
情報ソース: IFAからの報告書・レター、ファンドからのレター、Custodian Life Valuation Statement(2025年4月12日作成)、NHS for Sale(nhsforsale.info)のActive Care Group調査記事、The Lowdown(lowdownnhs.info)の2024年7月報道、Montreux Healthcare Fund 2023年11月報告書(iiplt.com)、Pecora Capital公式サイト、Bloomberg。最終更新:2026年4月23日

